給料債権は なぜ取立債務 ?
給料債権は、持参債務ではなく、取立債務だと判示している昭和38年1月24日東京高裁決定というのがあるということだそうですので、Westlaw Japanで判例検索して確認してみました。
確かにありました。「移送決定の抗告棄却決定に対する再抗告事件」に関してものでした。ところで再抗告とは「抗告裁判所の決定に対しては、その決定に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があること、又は決定に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときに限り、更に抗告をすることができる。」(民事訴訟法330条)とする申立てですので、明らか法令違反を理由として申立てをしたということのようです。
決定の要旨は「給料債権は従業員が営業所において労務に従事し、その代価として給料を請求するものであるから、暗默の合意がなされたと認められる別段の事情または合意のない限り、民法第四八四条商法第五一六条の適用を排除し、その支払場所は双方に好都合である使用者の営業所であると解するのが相当である。」ということになります。
持参債務ですと、債権差押命令を送達された第三債務者としては、供託しないと(理屈上は)遅延損害金を負担させられることになりますが、取立債務であれば遅延損害金の発生はないので、第三債務者は差押債権者に「取りに来たら払ってやるので、事務所まで取りに来い」などと、強気なことを言ったとして不利益を被ることは何もありません。
第三債務者にとって、持参債務か、取立債務かの違いは雲泥の差があることになります。