

キャンセルされた
売買契約の代金回収
強制執行による回収が見込めたとしても、訴訟で予定どおりの勝訴判決が得られないのであれば、回収できる金額は減ってしまいます。勝ちきる見通しと、そのためには何が必要があるかを見極めることが必要です。
強制執行による回収が見込めたとしても、訴訟で予定どおりの勝訴判決が得られないのであれば、回収できる金額は減ってしまいます。勝ちきる見通しと、そのためには何が必要があるかを見極めることが必要です。
薬剤の卸業をしているFさんから、納期まで決めた薬剤の売買契約を買主のBさんから一方的にキャンセルされてしまい、Bさんと話を付けようと思っているのだが、Bさんは逃げ回っていて話ができない。売買代金300万円の半額でも回収できたらいいと思っているが、回収可能だろうかとの相談を受けました。取引先の業績は順調で、預金を差押えれば300万円ぐらいの回収に困難はないということです。
よく話を聞いてみると、FさんとBさんの取引は、同一の薬剤を2度の納期に分けて半量ずつ納品する内容のもので、納期ごとに注文書と注文請書をやり取りし、一回目の納品と代金決済(300万円)を終えていた。一回目の代金決済から少しして、Bさんから二回目の取引をキャンセルするとの通知書がファックスで送られてきたそうです。
Fさんと面識がある同業のAさんが紹介してくれた取引だったで、半年ほど、AさんからBさんに、何度か話をしてもらったが、「キャンセルを了解してもらっている」との返事がその都度、返ってきただけで、時間を無駄にしただけであったそうです。どうしてよいか迷っていたうちに、今日まで一年ほど経ってしまったとのことでした。
訴訟を提起したとして、取引先がFさんの言うことをそのまま認めれば、裁判所は、取引先に対し、薬剤の引き渡しと引き換えに300万円を支払いなさいとのFさん勝訴の判決をしてくれるでしょう。ですが、取引先は「Fさんはキャンセルすることを了解してくれていました。それを1年も経ってFさんがキャンセルは無効だから、納品するので300万円を支払ってくれと言ってきました。」、「この1年の間、Fさんからも、Aさんからも連絡などありませんでした。」と嘘を言いそうです。
Aさんが「私は何度も、一方的なキャンセルなど認められないので、Fさんとの取引を進めるように話をした」と証言してくれるだろうから、取引先の嘘を裁判官は見破ってくれるだろうと思われるかもしれませんが、実際の裁判では、裁判官がAさんの証言があるからと言って、「Bさんが一方的にキャンセルした」と認定してくれるかは水物です。そう認めてくれないことの方が多いかもしれません。
訴訟での課題は「Bさんが一方的にキャンセルをし、FさんもAさんもBさんに翻意を求めていた」ということを証拠として提出できるかという点にあります。それをクリアーできれば、勝訴がほぼ約束されていると言えます。
AさんがBさんにキャンセルの翻意を求めていたことを明らかにする証拠を準備した上で、訴訟を提起することができたため、訴訟においてBさんは、「Aさんからキャンセルを翻意する働きかけはあったことは認めるが、Fさんがキャンセルを認めていた」という争い方をするしかできませんでした。その結果、BさんがFさんに「薬剤の引き渡しと引き換えに260万円を支払う」との内容の勝訴的な和解で訴訟を終えることができました。