「債権回収」  その定義  

      2016/04/21

日本の法文上、「債権回収」という用語は、サービサー法と呼ばれている、債権管理回収業に関する特別措置法(平成10年法律第126号)第2条第3項の「この法律において『債権回収会社』とは、次条の許可を受けた株式会社をいう。」という箇所にしか出てきません(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO126.html参照)。

同法は、「債権回収」についても、また、「回収」の定義規定を置いていません。そのため、「債権回収」とはどう定義されるものなのかを、サービサー法に関する注釈書の記述を参考にして確定するしか方法がありません。

黒川弘務、石山宏樹著「実務サービサー法225問」には「債権回収」を直接、定義している記述はありません。ですが、同書127頁の箇所で、回収に関し、「『回収』とは、経済的に債権の満足を得る行為であって、事実行為のこともあれば法律行為のこともあります。債権管理回収業における『回収』には、請求、弁済の受領、代物弁済契約・受領、担保権に基づく競売申立て、債務名義を取得するための訴訟定期、強制執行等の申立などのほかに、弁済契約書の徴求なども含まれます。」との解説がなされています。

その記述を参考にさせていただくとすれば、「『債権回収』とは、経済的に債権の満足を得るために行う一切の行為」と ざっくり定義すればよいと考えられます。

 

「債権回収」という用語が、サービサー法ができるまで法律用語としては存在しなかったなどということは信じ難いことです。

しかし、私の手元にある1981年3月20日新版初版第22刷の我妻栄編集代表「新版新法律学辞典」には「債権回収」が掲載されていませんので、「債権回収」を法律用語としては扱っていないようです。

1969年に初版が発行されている有斐閣の椿寿夫、西尾信一、森井英雄編「新版債権回収の法律相談」でも、「Q1 債権の保全・回収はどんなことか。」という質問に対して、解説者である西尾信一氏は解説中において、 「▼債権の回収 回収という言葉は法律用語ではありませんが、取引先が窮境におちいり任意に弁済できない場合に、債権者が積極的に働きかけて債権の補填を行うことといってよいでしょう。」との説明を加えられています。

やはり、「債権回収」は、かつては法律用語としては扱われていなかったということになるようです。

ところで、西尾氏は、債権回収を、「債権者が積極的に働きかけて債権の補填を行うこと」などと上品な表現で説明をされていますが、それって平易な表現をしたとするなら、「取立て」ってことですよね。

 

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